推定54mg

それでも今日も生きている

がんばって生きようぜ/未来を信じること

萌えアニメを消費しているだけのときってすげえハッピーでたぶんそれはシャブやってるときの多幸感とかに似ていて(やったことないけど)結局つまり酒やタバコやギャンブルをやってるときの「何も考えなくていい」感じの幸福感と同じなんだろうと思う。

二次元の女の子はかわいい。二次元の女の子が日常を生きていたりとか、笑ったり、泣いたりしていることが、尊いことのように感じられて、頭がハッピーになって、さあコンビニにメシでも買いに行くかと思ってテレビの前から重い腰を上げて外に出た瞬間に自分のことを思い出してうわっ死にてえ、と半ばクセのように考える。一生アニメだけ見続けて生きていけたらいいのにな。一生何も考えないで、寝て暮らせたらいいのにな。そしたらそんな人生は生きてても死んでても似たようなもんだし、今すぐ死んじまってもいいんじゃねーかな、とか。考えるわけだ。

居住地域は選べるけれど時代は選べない。X方向には動けてもY方向には動けないような不自由だ。でも、そう、X方向ならどこにだって行ける、飛べる、俺はどこにだって行けるんだ!と、希望のようなものを抱いた瞬間に別の俺が「未来に期待なんてしないほうがいい」と俺を嘲笑う。未来への期待とか希望とか。それもおそるべき多幸感を脳にもたらしてくれるんだ。未来はきっと素晴らしい!と信じることができればハッピーだ。この道を行けばまちがいないと確信できれば何もこわくない。一歩一歩、確実に、目標に近づいていることを、信じることができれば未来への暗澹たる不安はきっとだいぶ解消される。

なにか、未来への目標があると、いい。そうしたらそこに向かって進んでいける。挫折しても起き上がれる力が湧くだろう。

人格が幾つもある、というほどの、ものではないけど、たとえば「夕食はカレーにしよう」と決めたとき、別の声が「本当にカレーでいいのか?」「他にもっといい夕食があるんじゃないのか?」「カレーは糖質が高いぞ」とか言ってくると何もできなくなる。そういうときに「うるせえ俺はカレーが食いてえんだ!誰がなんと言おうとカレーを作って食う!」と反論できると最高だね。俺は俺に自信がなくて俺の選んだ道に自信がないので不安になるしその不安は仮定形の不安でしかないから、未来がどうなるかわからない以上、悩んだって仕方ないのに。

あのときああしていれば、やっぱりこのときこうしていたほうが、なんて、過去を悔いても詮無きことだ。あるのは現在と未来だけで、いや、未来だって存在なんかしていない。この時点でのここしか存在しなくてそしてそれはすぐに消滅してしまう。一歩一歩進むたびに足場がさらさらと崩れ消え去ってなくなっていくような感じ。そして一歩先の場所はまだ形成されていない。こわくて立ち止まっても周囲を歩く人間はどんどん先を進んでいく。休みたい、休んだら置いて行かれる、休んでいるのに時間は流れる。時間を巻き戻せたらいいのに。そしたら。そしたら?そしたら、俺は、完璧な人生を歩み直すのに。

俺という人間はあまりに不完全だ。完璧な人間なんてどこにもいないということを、わかっていても、でも俺は俺以外の人類がとてつもなくきちんと完成されたものに見えてしまう。俺だけが紙製の人形で、他のみんなはきちんとしたシリコン素材の人形である、みたいな、そういう感じ。なんだって俺はこんなに耐久性がないんだろう。

どこにだって行ける。紙製のぺらぺらの弱っちい俺でも一応どこにでも行ける権利と肉体はあって、ぐっと力をこめて膝を曲げて跳ぶだけ、それだけ、わかっている、でもこわい、足場が不安で、安定がしていない、居場所がぐらつく、俺は俺を見失って、誰か俺ががんばるための場所を作ってくれないかななんて思ってみても残念ながら俺が俺自身の力によってそれを作るしかないのであった。しっかりと。足場を。固めて。

がんばりたい。がんばりたい、気持ちはあって、休みたい気持ちもあって、両方あるときに「休みたい」を選ぶ自分のことが嫌いで夜中にボロボロ泣いたりするんだ。でもたぶんそういうときってがんばるのは無理なんだから、今はゆっくり休むしかない。できれば俺はマグロだかカツオだかみたいに寝ているときも泳ぎ続ける魚みたいになりたかった。永遠にがんばり続けることのできる肉体が欲しいけど俺の肉体は弱っちいし、これからはどんどん老いていってだんだんもっとがんばれなくなる。肉体も脳も交換はできない。俺はこの肉体と脳で生きていくしかない。でも大丈夫、どうせすぐに死ぬし、宇宙学者によると「すぐ」というのは「10億年後くらい」という意味らしい。それなら俺はあまりにもちっぽけで、小さくて、宇宙はあんまりにもでっかくて、ああ、安心して絶望できるし、その絶望は宇宙から見れば些細なのに、俺の肉体にとってその絶望はあまりにも大きくて、色々なことがよくわからなくなるので、もう、眠る。