推定54mg

それでも今日も生きている

君は男になることができない

またセフレができてしまった、と君が言う。馬鹿なんじゃないかと俺は返す。そうでしょう、と君が言う。馬鹿だな。

つきあわないとできないことって案外ないものだ。学生の時はつきあって手をつないでキスをしてセックスをするものだと信じていたけれど、そう、ヒトというのは、別につきあっていなくたって手をつなげるしキスもできるしセックスもできる。結婚していなくても中出しセックスをキメていい。相手がピルを飲んでいれば最高だね。なんて言ったらきっと怒られるだろう。誰に?倫理観のある人に。

つきあうことを考えるとしんどい、と君が言う。「つきあうことって、だって、何をしたらいいの?」訊かれても俺にはわからない。デートをして食事をしてキスをしてセックスをすればいいんじゃないのかと返す。「それって別につきあってなくてもできるじゃん」と、言われても、まあ確かにそのとおりだ。君がそのようになってしまったので君はもう人とつきあうことに意味を見出せない。たとえば「つきあっていない人とキスなんてできるわけがない!」という信条を持っている人間だったら、つきあうことに意味を見出だせるだろう。そういう人間はキスをするためにセックスをするために大義名分のために人とつきあうことができる。つきあうとかつきあわないとか、結局、そこの意味ってなんなんだろうな。あくまで口約束にすぎないような気がするけれど。

それってたぶん飼い猫に首輪をつける行為みたいなもんなんじゃなかろうか。飼い猫には戸籍もないし、その猫が自分のものだって示したところできっとあんまり意味はない。首輪がなければ野良猫。誰のものでもない。首輪があれば飼い主のもの。そしてそこにさしたる意味は、ない、はずだ。責任とかそういうものがちょっとあるだけだろう。俺の実家では耐えず3匹の猫を飼っていて、昔は首輪なんてつけていなかったけれど、いつからか首輪をつけるようになった。首輪がついていてもいなくても猫本人(本猫)には何の関係もない。ただ、そう、外を歩いているときに、他人が「あの猫は○○さんの家の猫」と認識するくらいだ。

「セックスをするたびに誰も彼もが男であることに絶望する」とも、君は言う。じゃあ女の子とセックスをしたらいい。誰も君を制限はしない。「そういうことじゃない」わからない。君は君が君でしか在れないことを嘆いているし、それなのに君は君という肉の器から逃れることができない。君は君にしかなれない。君がどんなに男になりたいと願っても君は女にしかなれない。セックスとは棒と穴を使っておこなうもので、そう、君は単なる穴にしかなれない。かわいそうだね。かわいそうなのかな?穴でしか在れないこと。出産するための機械とか言われちゃうこと。ダイエットをすれば「彼氏できた?」と周囲から言われ、化粧を変えても「彼氏できた?」、髪型を変えても、洋服の趣味を変えても。女には男が必ず付随するみたいだ。君はかわいい顔をしているから尚更滑稽だ。かわいい女には男がいるべきだという風潮があるみたいで君はいつも「独り身はもったいない」と言われている。かわいい女の子って男にセックスされるためだけに存在しているんだろうか?はは。滑稽だ。彼氏がいるほうが幸せだよって、君に教えてくれるのは、いつも女の人なんだって。そのことを君が嘆くのは、もしそんな発言をするのが男だったら単なるセクハラで済むのに、っていうことだ。「彼氏がいるほうがいいって、私に言ってくれる人たちに、悪意はないの。あの人たちはみんな心からそう思ってるみたい。きっとそうなんでしょ。彼氏がいたら幸せ。そう、思えることが、幸せ」頭を抱えながら君が言う。君の幸せは一体どこにあるんだろうね。俺はそれを笑ってやる。笑っても君は傷つかない。君も君自身を笑う。「女子高生とセックスがしたい」と言うので、したらいいと返してやる。「男に生まれて、かわいい女の子とセックスがしたかった」性転換でもしたらいいのに。性同一性障害?「そんな大層なものじゃない」そう。「エロ漫画でオナニーするんだけど、男に抱かれることを考えて濡れるし、女の子を抱くことを考えても濡れる」そりゃあ一挙両得だ。たいへんにお得な話だよ、それは。「コスパ最高」ほんとにね。ははっ。「しんどい」がんばれ。

かわいい君はかわいい女として男に抱かれて消費される。君もきっとすぐにしわくちゃの老婆になるから安心するといい。「でもさあ、なんか、ババアになってもセックスしたくなるらしいよ」マジかよ。「この前できたセフレがさあ、70歳までなら抱けるって言ってて。……70になってもセックスするんだね」ジュクジュクの熟女だな。俺は小学生から高校生までしか興味がないけど。「ロリコン」せやな。でもペドじゃない。未就学児はさすがに犯罪だろう。まあ高校生だって犯罪なんだけど。だから君もロリコンなんだぜ。

「あんただってセックスをしたら男なんだよね」そうだよ。別に俺は君のことを抱きたいなんて思っちゃいないけど抱いてくれと懇願されたらおそらくきっと抱くことはできる。それは一つの悲劇に近い。そこには恋とか愛とかそういうものは微塵もなくて欲望や打算すら存在しない。興味本位のほうが百倍マシだ。君は俺とセックスがしたくなくて俺も君とセックスがしたくない。だったらセックスをしないほうがいい。単純な話だ。君は女で俺は男。ただそれだけ。オーケイ?「OK」それで終わり。

肉の器から逃れられない。君は永遠に女であり続けるしかない。どんなにあがいたところで君は穴にしかなれない。残念ながらそれは単なる事実だ。君はまたセックスをする。復讐みたいに男に抱かれる。そうやって君はまた自分が女であることを確認して傷ついて、はは、そうか、それって一種の自傷行為なんじゃないか。滑稽だ。

「しんどい」

自業自得って言葉、知ってる?